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コラム

リーダーが自滅しないために必要なスキルとは

     

先月、ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された「リーダーシップの転換期」という特集をとても興味深く読みました。

とりわけ「部下の管理監督から成長支援へ」と題し、ダイアン・ガーソン氏とリンダ・グラットン氏が「マネジャーの役割はどう変わるか」を考察し、マネジャーの役割を再定義する記事から多くの示唆を得ました。

 

率直な感想を言えば組織内のマネジャーや部門長はリーダーシップをスキルとして磨き、専門性を一気に高めないと滅びてしまうのではないか、と危機感すら覚えました。
そこで今日は先述の記事を私なりに咀嚼し、これからのリーダーが自滅することなく、明るい未来を楽しくサバイブするためのヒントについてお話したいと思います。

 

 

改めてリーダーを取り巻く環境の変化を振り返ると、4つの大きなターニングポイントが浮かび上がります。

 

1:従来のピラミッド型組織から効率化を重視したフラット組織へ(2000年~)、

2:デジタル化における情報伝達のプロセスの変容(2010年~)

3:アジャイル化によるプロジェクト毎の流動的組織編制(2010年後半~)

4:コロナ禍下におけるフレキシブルワークの導入(2020年~)

 

ここ数年、役職ポジションを減らし、一人でも多くのプレイヤーを増やす方針を打ち出す企業が増えています。これは組織がフラット化した流れの延長線にあると言えます。

 

高度なマネジメント力を有した有能なプレイングマネジャーが求められる一方で、マネジメント層が大勢いると組織としては効率が悪いため少数精鋭化を図りたい。

 

その結果、管理職の数が減少する一方で、マネジャー一人当たりの仕事量が増え続けているというわけです。

 

 

デジタル化による情報伝達の変化は従来のトップダウンからボトムアップへとコミュニケーションの形態を大きく変えただけでなく、管理職の情報開示権限と部下をコントロールできるという、リーダーの権力を失効させました。

 

 

さらに「アジャイル化」の波がマネジメントの変容を後押ししました。

具体的には社内の内部労働市場を素早く効果的に活用するべく業務とそれに見合うスキルを有する社員を部署の管轄度外視でプロジェクトチームを編纂し、プロジェクト終了とともに解散を繰り返すプロセス変革です。

イノベーションの加速とは裏腹に多くのマネジャーたちは部下との接点を失い、部下のキャリア開発の機会と権限を失いました。

この流れはそのまま引き継がれ、昨今のジョブ型へと移行していると感じます。

さらにコロナ禍下におけるリモートワークはメンバーにとっては解放感が増しましたが、離れた場所からエンゲージメント向上を図り、チームの生産性を上げねばならないリーダーたちにとってはこの上ない負荷となりました。

 

 

このように部門長やマネジャーに課せられるタスクと求められるスキルが高度化する一方でマネジャーの仕事そのものが「急速に時代遅れになっている」と先述の記事の著者らは指摘します。

そして疲弊するマネジャーたちにさらに追い打ちをかけるデータを突きつけるのです。

 

 

調査会社ガードナーが世界75社の企業幹部に「マネジャーたちの現状について」調査を行ったところ、68%は自社のマネジャーたちが翻弄されていると答え、しかもそうした彼らの負担を和らげるための策を講じているかどうかの問いに対してイエスと答えた企業は14%にすぎなかったのです。

 

 

マネジャーの役割が部下の監督から成長支援に変わり、部下ひとりひとりのパフォーマンスを上げるためにやれ研修だ、やれガイダンスだ、やれコーチングだと急き立てられ、メンバー育成のみならず、採用や処遇既定の作成に加え、さらにはプレイングマネジャーとして自身もプロジェクトを推進し、成果を出すことを求められるのです。

こんな状態では高度なリーダーシップを発揮しようにも気力すら残っていないというのが本音ではないでしょうか。

 

 

 

そんな彼らの心中を考えると、「何とか力になれないか」という思いがこみ上げてきました。

たまたま開催を予定していた公開セミナーのタイミングと重なったこともあり、「俊敏なチームビルディング」と題して「リーダーがしあわせになるための3つのステップ」について話すことにしました。

 

 

3つのステップを簡単にご紹介しますと、

 

一つ目は、ひとりで背負わないこと。

言い換えれば、助け合えるチームづくりをすることです。

ファシリテーターの存在意義はチームのパフォーマンスを高めることですから、私にとっては本領発揮ともいえる得意分野です。

 

 

二つ目は、被害者意識からの脱却。

言い換えれば、自律した人材ということです。

自分自身の高い志、モチベーション、パーパスと言ってもよいでしょう。

自分を取り巻く状況に翻弄されるとどうしても被害者意識が生まれてしまいます。

環境に対して批判や要求をするのではなく、与えられた機会や場所を有効に活用する覚悟を持つことです。

 

 

三つめは、楽しむこと。

月並みな言葉のように思えるかもしれませんが、覚悟を以って楽しまないと自分の価値観を大切にしながら物事を進めることは案外、難しいものです。

 

 

3つのステップを通じて私が伝えたかったことはリーダーがしあわせでないと、メンバーも組織もしあわせにならないということです。

 

 

ある研究によれば、豊かで質の高い関係性に包まれると人はしあわせを感じるそうです。

心理的安全を確保できる、居心地のいい場があってはじめて、人は誰かと一緒にやっていこうという気持ちが生まれると言います。

そんな質の高い豊かな関係性をチーム内で構築できれば最強でしょう。

 

 

互いにリスペクトし合える環境の中でチーム全体が目指すべきゴールやビジョンを共有できるとリーダーがたった一人で気負わなくても頑張らなくても、メンバーの一人一人が次第に主体的な判断ができるようになります。

実にシンプルな法則ですが、こうしたチームづくりは業種、職種にかかわらず通用する、汎用性の高い専門的な能力なのだと私は考えています。

 

 

セミナー公開後、思いがけない反響をいただきました。

そのおかげで私たちがこれまで培ってきたファシリテーションのメソッドにはメンバーが市場で通用する能力を育み、キャリアを前進させる力を助けられるノウハウが詰まっていると改めて実感することができました。

 

 

もしもいま、「途方に暮れ」ていたり、「時代に取り残されている気がする」と感じていたり、つい「傍観者」になってしまいがちなリーダーの方がおいでになるのであれば、私たちは共に考えることから始めてみたい。そう思っています。

 

 

 

代表取締役 中島崇学



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