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コラム

言葉と思い

     

先月、「日本の人事」主催のHRカンファレンスにて登壇し、

~「口ぐせ」から信頼関係に至るステップ~というアプローチで

自律・共創社員を育てるコミュニケーションについて

お話をさせていただきました。

 

 

この講演への反響が思いのほか、素晴らしく、

私を勇気づけてくださる言葉がけに溢れていました。

改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

驚くほどたくさんのお問い合わせもありました。

その中で特に印象的だったのが、「それでも言葉には限界がある」というご指摘でした。

そこで、今日は一歩踏み込んだ話をしたいと思います。

 

 

過去に「言葉より始めよう」というコラムを掲載した時も実は、

似たようなご指摘がありました。同じ言葉を用いても、

発言する人によって言葉の受け取られ方が変わってくるというものです。

同じ「ありがとう」の一言でも、発する相手によって言葉の重みといいますか、

伝わる思いのエネルギーが異なるというのは頷けます。

 

ある人に言われた「ありがとう」の一言が宝物のように感じられることもあれば、

「よかったね」とやり過ごして終わる場合もあります。

言葉の影響力は単に言葉を交わす相手との関係性に左右されるだけでなく、

誰が言うか、によるところが確かに大きいですね。

 

 

また「言葉で言い表せることなど、心の5万分の一」

という台詞を聞いたことがありますが、

身体、言葉、心=身口意の「三密」に話を寄せて考えるなら、

言葉は「意=心」のほんのわずかな表象でしかないというニュアンスも、

とてもよくわかります。

 

 

だとすれば、私はこう考えるのです。

その人がどれだけ日ごろからその対象のことを慮っているか、

その思いの丈、深さは隠しようもなく、にじみ出てしまうものだ、と。

時に痛みさえ伝わることがあるでしょう。

 

 

他者に対して、愛に満ちた言葉を発することを仏教用語で「愛語」と言います。

慈愛の心を以って人に話しかける。

愛情のこもった言葉をかけて人の心を豊かにし、励ます。

この愛の心をもってすべての人々を助けるように働きかけるのが菩薩の理想でした。

 

 

愛語の本質とは、話すことにためらいのない言葉なのではないか。

そう思い至った時、私が真っ先に思い出したのは

マーティン・ルーサー・キングの「I Have a dream」です。

 

 

彼の言葉には要求も批判も抵抗もありません。

あるのはすべて自身の夢です。

語ることでみんなが幸せになる。そう信じる心から生まれた言葉です。

 

その夢はまず一人称の「I」で語られ始め、次第に「We」となっていきますが、

この「We=私たち」に一切の押しつけはありません。

私は私の夢を語るので一緒に来てもいいですが、必ず迫害されますという表明を行い、

怒りを抑えられない人は離れるように諭しながらも、彼は語り続けました。

 

 

 

I have a dream that my four little children will one day live in a nation where they will not be judged by the color of their skin but by the content of their character. I have a dream today!

 

私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢が。今日、私には夢がある。

 

 

 

Let Freedom Ring!

 

自由の鐘を鳴り響かせよう

 

 

キング牧師が語った言葉はすべて自身の夢であると同時に希望です。

いまこの希望の実現につながる未来を私たちが語り継ぐとするならば。

 

 

私たちは自分自身の、「私」の言葉として語るべきでしょう。

たとえそれが不器用であってにせよ、どんなに粗削りであっても。

自分自身の言葉は、自分の思いによってしか生まれないからです。

あなたの言葉がいのちの発露であったなら、

それは生きた言葉としてひろがり、きっと誰かの心に届くことでしょう。

 

 

ひょっとしたら、「自分自身の言葉」と聞いて、身構える人がいるかもしれませんね。

 

 

そんな時は親鸞や法然が説いた念仏の意味を思い返して欲しいのです。

意味がわかっても、わからなくとも、

お釈迦様の言葉を真似して唱えるだけで、いい作用がある。

はじめは心になくても、その言葉を繰り返すことで

やがて自分の身となり、誠の思いになる。

言葉にはそんな効果もあるのだということを。

 

                             代表取締役 中島崇学

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