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コラム

Human Co-becoming ~共に人間的になる組織を目指して~

     

 

こんにちは。共創アカデミーの伊藤です。可能性が開く場のデザインに携わっています。

 

今日は、私たちが今後取り組んでいきたい方向性について書きてみたいと思います。

 

私たちは今、大きな時代の転換点に立っています。

 

デジタル技術の急速な進歩、働き方の多様化、そして社会全体の価値観の変化。特にAI技術の飛躍的な発展により、従来人間が担ってきた多くの業務が自動化される中で、私たち人間にしかできない価値とは何か、人間らしく働き、生きるとはどういうことかが、改めて問われています。

 

これらの変化の中で、私が共感し、これからの活動の指針としたいと考えているのが、東京大学東洋文化研究所所長の中島隆博教授が提唱する「Human Co-becoming」という概念です。

 

 

Human Co-becomingとは何か

 

中島教授は、従来の西洋哲学における「Human Being(人間存在)」という概念に疑問を投げかけます。

「Being(存在)」という考え方は、人間を完成された存在として捉え、本質主義的な思考に陥りがちです。

 

しかし実際の人間は、常に変化し、成長し続ける存在ではないでしょうか。

 

そこで、中島教授が提唱した考え方が、「Human Co-becoming」です。

「Human Co-becoming」は、古代中国の「仁」という概念の読み直しでもあります。

「仁」は「人」に「二」と書くように、一人では実現できないものです。

人間は他者との関わりの中でのみ、真に人間的になることができる——これが「Human Co-becoming」の核心的な考え方です。

 

なぜ今、この考え方が必要なのか

 

AIが多くの業務を代替できるようになった今だからこそ、人間にしかできない価値——他者との深いつながり、創造性、そして新しい可能性への希望——がより重要になっています。

機械的な効率性ではなく、人間的な豊かさや意味の創造こそが、これからの時代に求められる力なのではないでしょうか。

 

中島教授は、「人間にとって本当に大事なことは、できるという次元ではなく、望むとか、希望するとかの次元だ」と述べています。

つまり、既存の能力を伸ばすだけでなく、新しい可能性を望み、それに向かって他者と共に歩んでいく力こそが重要になっていくのです。

 

共創アカデミーがこれから取り組んでいきたいこと

 

この「Human Co-becoming」の考え方を踏まえ、私たちは以下の3つの価値提供にさらに力を入れていきたいと考えています。

 

  1. 経験の深化と新しい言葉・視点の獲得を支援する

 

従来の知識インプット型の研修を超えて、参加者が体験を通じて新しい視点や言葉を獲得できる場を創造していきます。それは、これまでとは異なるボキャブラリーや思考を手に入れ、世界を新しい視点で捉える力を身につけることです。

 

私たちの研修やワークショップでは、単に知識を学ぶのではなく、参加者同士のインタラクティブな対話とその相乗効果を通じて、一人ひとりが自分なりの気づきや学びを「自得」することを重視します。

 

この過程で参加者が自然体になることで、本来持っている洞察力や創造性が自然に開かれていきます。そこで得られた新しい言葉や視点は、職場に戻ってからの行動変容の原動力となります。

 

  1. 「弱い連帯」による変容の場づくり

中島教授は、「タフな個人」ではなく「弱い連帯」を求めることの重要性を説いています。

私たちが提供する研修やワークショップでは、まず固着した関係性や緊張などを取り除く工夫をし、参加者心理的安全性の高い環境で本音を語り合い、互いの多様な視点や経験を分かち合う場を創造します。

そのことにより、参加者が自然体で関わり合えるようになります。

 

この体験を通じて生まれる「弱い連帯」は、職場に戻ってからも参加者同士をつなぎ続けます。

困難な課題に直面した時、一人で抱え込むのではなく、部門を越えて相談し合う関係性が自然に生まれるのです。

こうした緩やかなつながりが組織全体に広がることで、多様な知恵が結集される創発的な組織力が実現されます。

 

  1. 「望む力」を育み、発揮できる環境の提供

さらに、できることを増やす「能力開発」を超えて、「望む力」を育み、発揮できる環境を提供していきます。

参加者が自分なりの希望や理想を描き、それに向かって主体的に行動する力を、対話と実践を通じて育んでいきます。

これは、既存の枠組みの中で効率を上げることではなく、一人ひとりの中に眠る本来の力を呼び覚まし、新しい可能性を発見し、創造していく力です。

 

私たちは「その場にいる人と組織の可能性を信じる」姿勢を大切にしています。

一人ひとりが「こうありたい」「こうしたい」という願いを抱き、それを他者と共有し、共に実現していく——そんな場づくりを目指します。

 

 

組織を「共創の場」へ

 

私たちが最終的に目指すのは、組織を単なる労働の場ではなく、一人ひとりが成長し、共に新しい価値を創造する「共創の場」として再定義することです。

 

そこでは、階層や役職を超えた対話が生まれ、多様な視点が交わり、創発的なアイデアが生まれます。そして、一人ひとりが「この組織で働くことで、自分も成長し、社会にも貢献できる」という実感を持てる環境を実現したいのです。

 

 

社会全体の豊かさへの貢献

 

Human Co-becomingの実現は、単なる企業の業績向上にとどまりません。それは、一人ひとりの人生の質の向上と、社会全体の豊かさの実現に貢献する価値の創造ともいえます。

 

私は、「ファシリテーションは共によりよく生きる術である」という信念をもって、場づくりをしています。人々が「共に人間的になる」体験を提供し、より豊かで意味のある働き方と生き方を実現することに貢献していきたいと考えています。

 

共創アカデミー 取締役

伊藤加奈子

 


※参考

中島隆博(2021)『人の資本主義』

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