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コラム

言葉より始めよう

あなたが組織のマネージャーだったとします。

期日の迫った仕事に対して、部下が

「~しかできていません」と報告してきたら、どう思うでしょうか。

私だったら、内心心穏やかではいられません。

たとえ現状が全く同じでも

「今仕上がっているのはここまでです。

ただ、こういう要素を加味すればもっとよくなります。

ですからもう少し時間をください」と懇願されれば話は別です。

 

 

確かに「できません」と報告してきた部下の気持ちも

痛いほどよくわかります。

リスク回避が尊い、とみなされる組織の中では、

誰もが知らず知らずのうちに保身になってしまうからです。

それは私も例外ではありません。

ついうっかり、余計な発言をしたばかりに

つまらない仕事を押し付けられるのは嫌ですし、

自信満々で提案したアイデアを他人に批評されれば傷つきます。

 

 

「できません」とあらかじめ自分の限界を示したり、

「沈黙は金」と無言を決め込んだりして、

その場をやり過ごしたほうが大過なく、無事でいられます。

そのほうが楽ですからね。

 

私はこうした態度を「ひらめ、こしぬけ」

と呼んでいます。(自戒を込めて。)

 

上意下達の組織の中で上司の顔色を伺っていつも上目遣い(ひらめ)、

腹が据わらず(こしぬけ)、覚悟をもてないため、

周囲の空気を読んで無難に立ち回る。

 

ああ。いやだ、いやだ。

そんな他人様の顔色を伺う時代はもうおしまいにしましょう。

 

 

本当の信頼関係は自律した個人同士でなければ育めません。

自律した個人個人が互いの理想でつながり合う、

新しい時代に求められる理想的な関係性を築くためには

一人一人が内なる力を発揮することがとても重要です。

内なる力とは自分らしさと言い換えてもいいでしょう。

組織の一員という仮面をつけ、

長らく自分らしさを押し殺してきた人にこそ、

今日は提案したいことがあります。

 

 

まず「言葉より始めよう。」ということです。

 

コロナ禍の今、「三密」という言葉を聞かない日はありません。

この「三密」はもともと「身口意」という

真言密教の修行を指す言葉であることをご存じでしたか?

 

「身口意」の言いだしっぺは、かの空海さんです。

―――「三密加持すれば速疾に顕わる」

 

生命現象はすべて身(身体)、口(言葉)、意(心)という

三つの働きで成り立っていると説きました。

「加持」とは修行が目指すべきものですが、

とりわけ空海は口(言葉)のパワーを重要視しました。

たとえ真言の意味がわからなくても、

その音の響きや言葉を発する時の呼吸のリズム、

言葉自体が発する形や色が自身の身体や心に与える

影響力の大きさを彼自身が熟知していたからでしょう。

 

 

翻って、私ごとに置き換えるなら。

言葉を発することで、はじめて客観視できる自分もいるはずです。

言葉は他人に与えるインパクトよりも、

言葉を放った本人のほうにもたらす影響のほうが

ずっと大きいのかもしれません。

親鸞や法然が念仏を唱えることを第一の教義としたのも、

言霊という言葉の意味も、そう考えれば頷けます。

 

 

いい言葉を自分に響かせることでいい作用をもたらす。

まず、そこから始めてみましょう。

 

 

だからと言って「会議でイノベーティブな発言をしよう」とか

「何かうまいことを言ってやろう」と身構える必要はありません。

毎日何気なく発している口癖を意識して変えるだけでも、

自分にとって充分にいい作用をもたらす、と思ってみる。

 

たとえば昼時にふと「今日は蕎麦の気分だなあ」と、独り言が漏れた時。

「でも、寿司もいいなあ」

「でも、パスタもいいなあ」

「でも、カツ丼もいいなあ」

と心の中で続けていませんか。

自分の気持ちの中にいくつもの選択肢があることを楽しめばいいのに、

でも」という言葉に置き換えて、常に無難で安全な道を選ぼうとしてしまう。

 

実はこれ、無限に広がる可能性を自ら狭めていることにほかなりません。

 

そこで、こう言い換えてみる。

 

「今日は蕎麦の気分だなあ」

だとしたら、駅前の〇〇庵まで散歩がてら歩いてみよう」

 

ほら、なんだか楽しくなってきました!

 

「なんだ、そんなことか。」と侮るなかれ。

「でも」「だって」「しかし」などの拒絶の言葉は

あるがままの現実を受容しない態度の現れです。

そこから透けて見えるのは他者に負けられない、

勝ち続けるために優位性を誇示する利己の姿ではありませんか。

 

この凝り固まった利己を解きほぐすことは意外と難しいものです。

だからこそ、まずは自分の口癖に注目してみる。

自分らしさとは毎日の言葉の積み重ねによってつくられるものだからです。

 

代表取締役 中島崇学

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