全ては情から始まる。
2022年4月。始まりの季節がスタートしました。
新年度の方針に思いを巡らせている方も多いでしょう。
まさに今、桜が満開を迎えていますが、盛りの桜を前に、皆さんはどんなことを感じましたか。
「花びらのピンクがなんてきれいなんだろう」、「春を感じるなあ」、「今年もまた咲いたなあ」……。
もちろん、人によってこみあげてくる思いはさまざまでしょうが、やはり一様に何かしらの情が湧いてきたのではないでしょうか。
ある時、国文学者の中西進さんが「デジャヴ」と「情」と「なつかしい」は同義語であるといようなことを仰っていました。
それを聞いて私は「ああ、本当にそうだなぁ」としみじみ感じ入った覚えがあります。
私たちは日ごろから企業のリーダークラスの方に対し「リーダーはまず自分がどんな世界を創りたいのかヴィジョンを語ること」の重要性をお話しています。
と同時に、そこで語られるヴィジョンは「あなたがうれしいと感じる世界を語ってください」とも伝えてきました。
なぜならビジネスも人生もやはり、始まりは分析からではなく、生きる歓びやさまざまなアートや音楽を生み出す源となる「情緒」からスタートさせたいと願うからです。
情こそが人の感動を呼び、人の記憶となり、それが尊敬を生む根源になると私たちは信じています。
私個人の「こうありたい。こうなるとうれしい」という情のありかを探っていくと、いつも思い出される原風景があります。
田舎に遊びに行き、芝生の上で寝ころんだ時に感じた草の匂い。
犬とじゃれ合って笑い転げた経験、くすぐったいまでのワクワク感、毎日後先考えず過ごし、それをまるごと受け止めてくれる人たちの笑顔。
心をよぎっていくさまざまな情景がありますが、実は明確な実体験とは違っているかもしれません。
それでも「きっとこうだったのではないか」というなつかしい記憶となって私の心の根底に確実に宿っています。
共創アカデミーには現在、経営に携わる7人のコアメンバーがおりますが、どのメンバーにもそれぞれ違った原風景があるはずです。
そこで私たちは新年度の方針を決めるにあたり、まずはお互いの根底となる、心の原体験について語り合ってみることから始めることにしました。
ご縁あって集まった仲間の心の原点(デジャヴ)を知ることはきっと、皆がいまここに集まった意味を知るいい機会になると感じたからです。
もちろん、みんな違って、みんないい。
人様の行動の源には必ず純粋な動機があり、その動機は純粋に「喜び」から発する以上に大概、「悲しみ」や「痛み」や「苦しみ」を伴う情とセットになっています。
ですから、プラスの感情だけでなく、マイナスの感情も仲間と分かち合うことが大切です。
グーグルの創始者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンを検索エンジンの開発へと導いたのも情が動いたことが始まりだったようです。
当初、キーワード検索をすると検索上位に掲載されるキーワードは広告料の額に応じた結果でしかありませんでした。
万人のためであるはずのwebサイトが限定的な世界になっていることに対し、ふたりは息苦しさを覚えました。
その息苦しいという感情が始まりだったわけです。
そして「必要な人に必要な言葉を届けたい」という情動に突き動かされ、現在のグーグルエンジンが誕生しました。
ふたりには叶えたい未来が見えていたのでしょう。
望む未来を「この目で見たい」という熱量が綿密な計画を生み、分析や予算や段取りが後に続く。
その逆はありません。
やりたいことを主体的に分かち合い、成し遂げるための原動力となるもの。
「全ては情から始まる」。
新年度はそこからスタートし、仲間たちと共に知と情と意のバランスを模索しながら、『サピエンス全史』でお馴染みのユヴァル・ノア・ハラリ先生が説く「虚構を分かち合う愉しみ」をビジネスシーンにおいて具体的に体現していきたいと考えています。
代表取締役 中島崇学