普段着でキャリアを語る──日常の対話で育てるメンバーの自律と成長
「キャリアの話は、キャリア面談のときだけ」。そんなふうに思っていませんか?
でも実際は、日々の業務のなかにも、キャリアについて語るチャンスはたくさんあります。
ちょっとした問いかけや何気ない会話が、メンバーのキャリア自律を後押しし、職場に新たなエネルギーをもたらします。
特別な時間を設けなくても、普段の業務の中で自然にキャリアを語り合う――そんな「普段着」のキャリア対話をどう育てていけばいいのか。
私自身の現場経験を交えながら、考えてみたいと思います
1.日常にあるキャリア対話の種
マネージャーとして、業務の進捗や成果についてメンバーと話す機会は多いと思います。でも、「この経験、将来にどう活かせそう?」といったキャリアに触れる問いは、意外と少ないのではないでしょうか。
キャリア支援は、特別な面談だけで行うものではありません。日々のやりとりの中で、「これって、あなたの成長にどんな意味があると思う?」と一言添えるだけで、メンバーは自分のキャリアについて考えるきっかけを得られます。
こうしたやりとりを通じて、メンバーの視野は広がり、自分なりのキャリアを描く力が少しずつ育っていくのです。
2.キャリア自律は、組織のエネルギー源
働き方が多様化し、スキルのアップデートが常に求められる時代。一人ひとりが「自分のキャリアは自分で描く」ことがより重要になっています。
実際の調査でも、「キャリア自律が進んでいる組織ほど、エンゲージメントが高い」という結果が出ています。。キャリア支援は、単なる個人の成長支援ではありません。職場の活性化、パフォーマンス向上、そして組織の未来をつくる営みでもあるのです。
3.マネージャーの新しい役割──「問いかける」こと
キャリアの支援において、マネージャーの役割は「答えを与える」ことではありません。大切なのは、問いを投げかけることです。
「この業務で、どんな経験を積みたい?」
「このチャレンジが、どんな未来につながると思う?」
問いかけを通して、メンバー自身に考えさせる。そして、気づきを促す。そのプロセスが、キャリアの自律を後押しします。
マネージャーに求められるのは、方向を示しながらも、メンバーが自分の言葉で自分の未来を語れるようサポートすることなのです。
4.普段着でキャリアを語る四つのタイミング
キャリアについて自然に語るチャンスは、普段の業務の中にたくさんあります。とくに意識したいのは、メンバーとかかわる次の4つの場面です。
- チームに新しく招き入れたとき
「これまでどんな仕事が面白かった?」「どんなことに挑戦したい?」
→ メンバーの経験や意欲を引き出し、メンバーのキャリア展望とチームの期待を結びつけます。
- 新しい業務をアサインするとき
「この仕事、どんな力が磨けそう?」「どう取り組めば将来につながると思う?」
→ 単なる業務の説明ではなく、その経験のキャリアにおける意味づけを促します。
- 業務の進捗確認をするとき
「この段階までやってきて、何か新しい気づきはある?」「どこに自分らしさが出てると思う?」
→ 成果だけでなく、プロセスでの気づきや成長を意識させ、さらなる学びの挑戦を促します。
- 業務が一区切りついたとき
「今回の経験、次にどう活かせそう?」「これを通じて、自分の目指す姿に近づけた?」
→ 経験と成果を振り返り、次のキャリアステップにつながる具体的な学びとして定着させます。
このように、「普段の業務」のなかに、キャリアの種をまく問いを添えていくことで、自然にキャリア対話の文化が根づいていきます。
5.まずは「自分自身のキャリア自律」から
そして何よりも大切なのは、マネージャー自身がキャリア自律を体現していることです。
私自身も、本業の部門運営に加えて、プロボノ活動やパラレルキャリアの実践、学び直しにも取り組みながら、「自分はどんなキャリアを築いていきたいのか」を日々考え続けています。
メンバーは、マネージャーの言葉以上に、その姿勢や行動から多くを感じ取ります。自分自身のキャリアと向き合う姿が、チーム全体に良い影響を与えるのです。
【まとめ】
キャリアを語ることは、特別な時間を作ることではありません。日々の業務の中で、少し意識を向けるだけで、誰でもできることです。
「今、あなたの成長にとって、これはどんな意味があるだろう?」
そんな一言が、メンバーにとっての大きな支えになり、職場に新たなエネルギーをもたらします。ぜひ今日から、気負わず、自然体で。「普段着」でキャリアを語る対話、始めてみませんか?
共創アカデミープロフェッショナルパートナー講師
元木 誠