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コラム

「本来の自分を思い出す」とは?

先回のコラム(「未来であなたを待っている人がいる」)では自分のキャリア人生を振り返り、過去の意味づけを行う機会を意識的に創ることについて触れました。

今回は私自身が振り返りによって得た、気づきについてお話させてください。

 

私は40代後半から「職場を明るくすること」や「場の空気を変えること」に注力してきました。

現在それを生業(なりわい)にできるまでに至った道行きを思い出してみると、子ども時代に遡ります。

6歳離れた姉が中学生を過ぎ、いわゆる思春期に入った頃からでしょうか。

両親との仲が必ずしもよくなかった。

家にいても、どこか息苦しくて、子どもながらにその場の空気をなごませようとあれこれ試みていました。

その様子を見ていた周りの大人も両親もほめてくれましたが、私自身は苦しくて仕方がないので自分を癒したくてやっていたことにすぎませんでした。

同じような体験がもうひとつあります。

 

たまたま仕事で滞在していたイラクで戦争が勃発し、帰国できなくなってしまった1988年~1989年の頃です。ミサイルでの空爆が続く中、逃げるに逃げられず、宿に籠りきりの生活でした。

先の見えない閉塞感の中で、周りにいる仲間をなごませようと明るく振る舞う自分がいました。

思い起こせば、これも決して英雄的な行為などではなく、その場の空気感に堪えられず、単に自分が苦しかったからやっていたにすぎませんでした。

 

やがて会社員として多くの部下をまとめる立場になった時、これまでの実体験を活かし、会社の風土自体を活性化するプロジェクトを立ち上げてみましたが、これは失敗しました。

思い起こせば、当時の私は自分の成果として認められたい、評価されたいという下心から始めていたからです。

手段が目的化していました。

何かの目的のために空気を明るくする行為は偽りですから、やればやるほど周囲の人々の心は離れていきました。

 

その苦い経験から単純に「職場を明るくする」ことに徹していたら、メンバーが主体的に動くようになり、「空気を明るくすること」を生業にできるまでになりました。

 

子どもの頃から私は「空気が停滞する、滞留する」ことに敏感でした。

苦しかったからです。

ですが、その苦しみが自分にとっては大きなギフトであったことが今だからわかります。

苦しみの中から自分の支えを見出せるかどうか。

何とかしようと試行錯誤することに夢中になってしまう。そうすることで誰かが喜んでくださる。

 

誰から教わったわけでもなく、自然に自分の体で覚えたことが今につながっている。

 

そんなふうに自分の過去を自分なりに意味づけをすることができました。

その場の空気感が変化すること。

それは私にとって、本来の自分を思い起こさせてくれることでもあります。

ですから、今の私はどんな組織でも空気を変えられる、変わるということを知っています。

 

 

共創アカデミーが企業研修やセミナーを通じて提供していることもいわば「空気を変えること」です。

せっかくなら「明るく変えたい」。

といっても、作為的に明るくするわけではありません。

その場を体感することで、その場に居合わせた人々の表情や思いやパーパスや会社とのエンゲージメントが自ずから輝きだす。

 

この輝きを目撃するとき、いつも思い出すエピソードがあります。

夏目漱石の『夢十夜』、第6夜に登場する、運慶の話です。

運慶の彫刻のみごとさを夢の中で会話するシーンがあるのですが、そのまま引用します。

 

「よくああ無造作に鑿を使って、思うような眉や鼻ができるものだな」と自分はあんまり感心したから独言のように言った。するとさっきの若い男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と云った。

 

まさしく、この感覚です。組織の中で人は誰しもある種のペルソナを背負っています。

やりたくもない業務をこなし、気の合わない上司に作り笑いをしながら毎日をやり過ごしているかもしれません。

ですが、誰もが人の役に立ちたいと思っています。

皆んな、愛の塊を秘めています。

私たちがしていることはその愛の塊を掘り起こすようなものなので「けっして間違うはずがない」のです。

人は自分の本来の姿を思い出したとき、本当の笑顔が顕れます。

思いがけない魂の躍動が発露する。

そんな瞬間に幾度も出会ってきました。

それはたとえようもない、崇高な空気です。

そんな空気に包まれてはじめて掘り起こされる本来の姿が確実にあります。

想起するとは魂の役割だと言ったのはプラトンだったでしょうか。

 

余計なメッキをはがして、皆さん一人一人がもともと宿している本来の姿を思い出し、組織の普遍的な力を開花させることができたなら、こんなにうれしいことはありません。

 

その喜びが今の私の原動力になっています。

 

                          代表取締役 中島崇学

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