AND思考で広がる新しい可能性 〜二律背反を超えて創造的な未来へ〜
ビジネスパーソンの多くが直面している「スピードか品質か」「個の尊重かチーム力か」といった二択の罠。
このような二律背反を乗り越え、相反する価値を同時に実現する「AND思考」が、組織と個人の可能性を広げる鍵となっています。共創アカデミーが主催した「AND思考革命」ウェビナーから、その本質と実践法をお伝えします。
「革命」の革命 – 二者択一からの解放
私たちの日常は二者択一の連続です。出社かリモートか、短期的成果か長期的成長か、効率か創造性か—。
一つを選べば、もう一つを諦めなければならないと思いがちの毎日です。
しかし、急速な変化の時代において、二者択一(OR思考)だけでは限界があります。
企業のフラット化、効率重視の加速、働き方改革、コロナ禍による環境変化など、かつてないほどの変革が求められる今、両立すべき課題が増えています。
「AND思考革命」の「革命」が意味するのは、従来の革命(古いものを否定し新しいものに置き換える)ではなく、「革命の革命」です。
つまり、否定や排除(択一)ではなく、共存と創造(両立)によって新たな価値を生み出す思考法への転換を意味します。
星野リゾートの星野社長の例が象徴的です。
倒産した旅館を再生する際、既存の従業員に「これからも皆さんが大事で、皆さんが考えること、思うこと、夢見ることを実現するために来ました」と伝えたというエピソードは、まさにAND思考の体現と言えるでしょう。
交感神経と副交感神経 – 選択と発想の使い分け
OR思考は、人間の「交感神経」の働きと深く関連しています。狩りや農作業など、行動には選択と集中が不可欠であり、それを支えるのが交感神経です。
一方で、思考の幅を広げ、創造性を発揮するためには「副交感神経」の活性化が必要です。
現代社会は「忙しい」「余裕がない」「緊張している」といった交感神経優位の状態を生み出し、「選択と集中」のみが重視される傾向にあります。
しかし、複雑な課題に対応するためには、思考においては「幅広い選択肢を持つ」ことが重要です。
チャールズ・ダーウィンの言葉が示唆に富んでいます。
「生き残るのは最も強い種でもない、最も賢い種でもない。変化に最も敏感に反応できる種である」
変化の時代に求められるのは、柔軟性を持った思考なのです。
AND思考の4ステップ – 実践へのアプローチ
AND思考は単なる概念ではなく、実践的な思考法です。そのプロセスは以下の4つのステップで構成されています。
①現実を見つめて両立すべき二律背反を洗い出す
まずは自分が直面している両立すべき二律背反の状況を明確に認識することから始まります。時空間(過去・未来、長期・短期など)、主体と対象(自分・他者、組織・個人など)、価値と目的(成長・成果、集中・リラックスなど)、視点と思考(物質・精神、論理・感性など)の観点から、書き出します。
このプロセスはジャーナリング(書き出す行為)として効果的です。頭の中だけで考えるのではなく、実際に紙に書き出すことで、問題の全体像を客観的に捉えることができます。
②保留して問いかける
次に重要なのは、即座に判断せず「保留」することです。広い視野で物事を捉えるためには、まず天真爛漫にリラックスし、自分の大切にしている価値観で足元を照らすことが大切です。
この保留のための実践的な方法として、「深呼吸する」「コーヒーや紅茶を飲む時間を取る」「身体感覚を観察する」などが挙げられます。これらは交感神経から副交感神経への切り替えを促し、創造的な思考への準備となります。
③方向性をイメージし発想を楽しむ
保留状態から、自分の目指す理想や方向性を明確にイメージします。この段階では、制約にとらわれず、自由な発想を楽しむことが大切です。比喩的に言えば、「窓を開けて外の空気を吸い、太陽の光を感じる」ような開放感を持ちながら、新たな可能性を探ります。
④創造的発想からの選択
最終的には選択と行動が必要です。しかし、ここでの選択は当初の二者択一(AかBか)ではなく、新たな創造的選択肢(C)を見出すことが目標となります。AND思考を通じて生まれた発想から、最も価値ある選択肢を選び、実行に移します。
習慣化がもたらす成長
AND思考は一度身につければ完成するものではなく、継続的な実践を通じて成長していくものです。
習慣化することで、必要な時に自然と使えるようになり、また思考自体も深化していきます。
個々人の中でAND思考が成長し、それが集まることで社会全体のAND思考も進化していく—そのようなサイクルを通じて、私たちの望む社会が実現していくのです。
おわりに – 共存共栄の思想へ
AND思考の根底にある思想は「共存共栄」です。
排除や対立ではなく、相反するもの同士が共に生き、新たな価値を生み出していく—このような思考法は、複雑化する現代社会において、ますます重要性を増しています。
「美味しいものを食べる OR ダイエットする」
「仕事に集中する OR 家族との時間を大切にする」
といった日常の小さな選択から、「社会的使命 OR 利益追求」といった組織の大きな課題まで、AND思考はさまざまな場面で活用できます。
選択と集中が必要な場面もあれば、両立と統合が求められる場面もある。
その使い分けの智慧と、二律背反を超えて創造的な解決策を見出す力が、これからのビジネスパーソンには不可欠なのではないでしょうか。
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このウェビナーの第2弾を5月22日に開催します。
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