AND思考革命・第2弾 〜両立の悩みを楽しみに変える実践法〜
「短期利益か将来への投資か」「個人の成長かチームワークか」—
私たちの日常は相反する価値の両立に悩まされています。
第1弾のウェビナーでAND思考の基本概念をお伝えしましたが、
このコラムでは、「AND思考革命・第2弾」ウェビナーから、その実践的エッセンスをご紹介します。
両立に悩むから、両立を楽しむへ
「どうしても両立したいんだ」という場面こそ、AND思考の出番です。
私たちは日常、様々な両立の課題に直面しています。キャリアの専門性と汎用性、チームの一体感と個人の自立、速やかな結果と持続的な成長—これらの課題に対して、従来のOR思考では「どちらかを選ぶ」という発想でした。
しかし、AND思考では発想を転換します。
「両立したいものは両立させよう。両立したくないものは選択すればいい」
つまり、すべてを両立させる必要はありません。
本当に両立が必要なものを見極め、それを「悩み」ではなく「楽しみ」として捉える—これがAND思考の本質です。
成功事例に学ぶAND思考の威力
実際のビジネス現場でも、AND思考は驚異的な成果を生み出しています。
JALの稲盛和夫氏による経営再建は、その象徴的な事例です。
大胆な変革と細部の数値へのこだわりという相反する要素を両立させ、わずか2年8ヶ月で再上場を果たしました。
その成功の要因は、フィロソフィー(正しい価値観の明確化)、アメーバ経営(一人ひとりの採算意識)、対話(ゆがみを防ぐコミュニケーション)の3つにありました。
日本ハムの新庄監督も、華やかなエンターテインメントと堅実な勝利を見事に両立させています。
「お客さんがお金を払って来てるんだから楽しんでもらわなきゃプロじゃない」という顧客視点と、「本気・勇気・個性」という3つの価値観を軸に、選手の個性を最大限に伸ばしながら勝利を重ねています。
AND思考の4ステップ実践法
ステップ1:現実を見つめて課題を洗い出す
まず、両立したいものを明確にリストアップします。重要なのは「両立しなければならないもの」に絞り込むことです。何でもかんでも両立させる必要はありません。
ステップ2:保留して問いかける—「ワイドアンドリラックス」の魔法
両立の課題が明確になったら、すぐに判断せず「保留」することが重要です。
ここでキーワードとなるのが「ワイドアンドリラックス」です。
現代社会では、私たちは常に交感神経優位の緊張状態にあります。しかし、創造的な思考には副交感神経の活性化が不可欠です。
具体的な保留促進法として、以下の3つをお勧めします:
- 深い呼吸:浅い呼吸で こわばった身体を呼吸で柔らかくする
- 身体感覚の観察:体の状態を意識してリラックスする
- コーヒー・紅茶タイム:古来からリラックスに効果的なツールを活用する
ステップ3:方向性をイメージして発想を楽しむ—アファメーションの力
リラックスした状態で、2つの重要な問いを自分に投げかけます。
私の本当の望みは何か?
その時、私は何を大切にしているか?
この答えを「アファメーション」(自分自身への肯定的な言葉がけ)として唱えます。
アファメーションの効果は科学的にも実証されており、プラセボ効果によるドーパミン分泌、引き寄せ効果による焦点化、ポジティブ感情による創造性向上などが期待できます。
アファメーションのポイント
- 肯定語を使用:「戦争のない社会」ではなく「平和な社会」
- 現在進行形・過去形で表現:「達成したい」ではなく「達成している・達成した」
- 動きや感情も表現:「みんなが笑顔でニコニコしている」
- 他人と比較しない:自分自身の価値に焦点を当てる
- 心底願いながら:心を込めて言葉にする
さらに、「自分におめでとう、周囲にありがとう」という感謝の気持ちを込めて、その感情を全身で味わうことが重要です。
ステップ4:創造的発想から具体的選択へ
アファメーションによって意識レベルが変化した状態で、改めて両立の課題を見つめ直します。
アインシュタインの言葉「問題はそれを生み出したのと同じ意識レベルでは解決できない」が示すように、新しい意識レベルでの発想が鍵となります。
多面的なアイデア出しの視点
- 両立のための良策:AとBを同時に実現する方法
- 新たな組み合わせ:従来にない組み合わせによる解決
- AとBだけではない第三の世界:全く新しい選択肢の発見
- 優先順位による取捨選択:やはり選択が最適な場合もある
日常での習慣化—5つのステップ
AND思考を身につけるには、継続的な実践が不可欠です。以下の5つのステップで習慣化を図ります。
- リストアップ:両立したいことを書き出す
- 実践:4つのステップを実際に試してみる
- 記録:結果と感想をジャーナリングする
- 共有:他者に伝えてフィードバックをもらう
- 成長実感:ビフォー・アフターを振り返る
特に記録と共有は重要で、言語化することでストレス解消効果も期待でき、他者との対話によって思考がさらに豊かになります。
「革命の革命」が目指すもの
なぜ「革命」と呼ぶのでしょうか。
従来の革命は、旧いものを否定して新しいものに置き換えるため、対立や反発を生みがちでした。
しかし、AND思考による「革命の革命」は、既存の強みを生かしながら新しい要素を両立させる共存共栄の論理です。
現代社会では、多様な価値観の両立がますます求められています。
効率性と人間性、グローバル化と地域性、デジタル化とアナログの良さ—これらの課題に対して、AND思考は新たな解決の糸口を提供します。
おわりに—可能性への信頼
AND思考は単なる問題解決手法ではありません。
「両立できないものは実は何もない」という可能性を信じ、制約の中に創造性を見出す生き方そのものです。
忙しい日常の中で、つい「AかBか」の選択に追われがちですが、一度立ち止まり、「AもBも」の可能性を探ってみる。
そこには予想もしなかった第三の道が開けているかもしれません。
「窓を開けて空を見上げ、光を見つける」—そんな余裕を持った思考が、個人にとっても組織にとっても、新たな価値創造の源泉となるのです。
選択と集中が必要な場面もあれば、両立と統合が求められる場面もある。
その使い分けの智慧と、二律背反を超えて創造的な解決策を見出す力が、これからのビジネスパーソンには不可欠なのではないでしょうか。
次回は「チーム・組織版AND思考」を7月23日に開催予定です。
個人の実践から、さらに組織での活用へと発展させてまいります。